みたら氏と2人、御茶ノ水で用事を済ませてさて帰ろうと思ったときに、グーとお腹が鳴った。
そういえば、今日は朝ごはんも食べていない。御茶ノ水の駅前にもいろいろお店はあるけれど、なんとなく気が向いて淡路町のほうへてくてくお散歩をする。
たしか、あっちのほうにお店がいくつかあったはず。久しぶりに「かんだやぶそば」に行こうか。知らないお店にふらりと入ってみるのもいいよね……。
なんておしゃべりしながら歩いていたら、「洋食」の文字が目に飛び込んできた。
神田淡路町「松栄亭」。無茶振りから生まれた名物メニューは夏目漱石も愛した味
なんだか良さそうな洋食屋さんがあるよ、わたしちゃん。まつ……いや、「しょうえいてい」って読むのかな。あれ、どこかで聞いたことのある名前だな……?
あのお店、何回か前を通って気になってたのよね。近くでメニュー見てみようか。
「Since 1907」だって。かなりの老舗だね。横の紙は何だろう……?
雑誌の切り抜きかな? ……へぇ、ここ夏目漱石さんが来てた洋食屋さんなんだって!
そうなんだ。何々……へぇ、ここの初代店主がもともと「フォン・ケーベル博士」っていう人の専属料理人で、博士の教え子だったのが漱石だったみたい。
博士に「何か変わったものを作って」って言われて急場しのぎに作ったのが「洋風かきあげ」である、ですって。
なかなかの無茶振りだね。
この間神保町の喫茶店で『こころ』を読んだばかりだし、何か縁を感じるな。入ってみようか。
ボリュームたっぷり! 神田淡路町の「松栄亭」でアジフライとロースカツをいただく
ランチは5種類あるみたいね。あぁーーー、どれもおいしそうで迷うなぁ……。
漱石さんが食べた「洋風かきあげ」はランチには入ってないね。単品メニューみたい。ランチでも注文できるらしいけど、どうする?
そっか、漱石ゆかりのメニューも気になるな。うーーーーん、でも今日はアジフライに呼ばれてるような気がするのよね。
そういうときあるよね。呼ばれちゃったら仕方ないね、アジフライが入ってるBランチにしようか。
チキンが終わってロースカツになるって店員さんが言ってたけど、それで大丈夫?
うん、大丈夫。
おいしそう! アジフライ大きいね。お皿からはみ出してる。
んんん〜〜、おいしい……! アジフライはかなり肉厚で食べ応えがある。ロースカツのほうは、すごくやわらかい。からしもつけてみようかしら。
お、わたしちゃんもカツにはからしをつける派なんだね。たまにからしが置いてない洋食屋さんもあるけど、それだとちょっと物足りないんだよねぇ。
そうそう、からしがないと物足りないわよね。
この添えてあるポテトサラダもおいしい。洋食屋さんのポテサラって、特別な食材を使っているようには見えないのに不思議なくらいおいしいのよね。
そういえば、最初にお店の名前を見たときに見覚えあるなって思ったんだけど、池波正太郎さんの『散歩のとき何か食べたくなって』っていう本にここのお店が出てたんだよね。
そうなんだ!
「今度来たときはポテトサラダをおみやげに買って帰って、食パンにたっぷりはさんで食べたいな」って書いてあったよ。池波さんもポテサラが好きだったんだね、きっと。
その食べ方いいわね。創業時からメニューはほとんど変わっていないらしいから、この味を食べていたんだろうな……。そう思うとなんだか不思議ね。
そうだね。今度は洋風かきあげを食べにくるのもいいな。
さて、食べ終わったことだし、腹ごなしに少し散歩でもしようか。
そうね、行きましょ。
神田淡路町「松栄亭」店舗情報
【みたら氏の一言めも】こちらは全席禁煙です。