浅草のアンティークショップ「東京蛍堂」で大正ロマンに触れる休日(着物/ヴィンテージワンピなど)

明治〜昭和にかけて、演芸場や映画館などの大衆娯楽が発展したエリア「浅草公園六区」は、浅草の中でもとくに賑やかな場所でした。(浅草公園=浅草寺付近にかつて存在した公園のこと。一区〜七区に区画が分かれていた)

六区の名称はいまも各所に名残を残しています。そのうちのひとつ「浅草六区通り」に、異彩を放つ「モボモガ御用達」の看板があるのをご存知でしょうか。

看板のある細い路地の奥には、美しい古道具たちが静かに並ぶお店があります。その名は、「東京蛍堂」。

時を重ねるということは、価値を増すということ。そんなことを改めて教えてくれたお店です。

モボモガ御用達。浅草のアンティークショップ「東京蛍堂」

「東京蛍堂」は、すこしわかりにくい場所にあります。目印は、浅草・六区通りを歩いているときに目に入る「モボモガ御用達」の真っ黒な看板。

なかなかインパクトのあるたたずまい……。
通りかかるたびに気になってはいましたが、中のようすもよくわからないし、正直入りにくいな……と思って、なかなか入れずにいました。

「モボモガ」は、「モダン・ボーイ」「モダン・ガール」の略。
1920年代(大正末期〜昭和初期頃)に、西洋文化の影響を受けた先端的な若い男女のことを指す呼び名です。

ここでいう「西洋文化の影響」は、思想どうこうというより、主にファッションのこと。
当時は和装から洋装へと変化を遂げる過渡期。そんな時代に、最先端ファッションに身を包み、銀座の街を闊歩しパーラーや喫茶店で食事を楽しむ……といった若者たちが、「モボモガ」と呼ばれました。

東京蛍堂は、現代のモボモガ御用達のショップ、ということでしょうか……?

お店の入り口は、看板が出ている場所のさらに奥まったところにあります。看板が出ていなければ、この細い路地の奥にお店があることには、気づかないだろうな……。

やっぱり入りにくい、、、と一瞬ためらいましたが、勇気を出して入ってみることに!

着物、バッグなど状態のいいUSED品が多数|浅草「東京蛍堂」

「東京蛍堂」は、店内は撮影NG。入り口付近の写真のみですが、雰囲気がわかるように少しご紹介します。

入り口の前の一角。居酒屋でよく見かける信楽焼のたぬきが、とぼけた顔でたたずんでいます。いい味出してる。
奥のランプには、小さく「ほたる」の文字が。日が落ちる時間帯になったら、いい雰囲気を醸し出してくれそうなランプです。

入り口には、ブラウン管のテレビ。こちら、外側部分にはナショナルと書いてありますが、中に入っているブラウン管テレビにはシャープの文字が。ナショナルのレトロな外観を活用して、中に別の小さなテレビを入れているようです。
テレビには白黒映画が流れていたので、受信の設定をすれば地上波もふつうに見られるんじゃないかな、と思います。(売り物かどうかは不明)

店内は薄暗くて、レトロなムードたっぷり。商品が所狭しと並んでいました。
ワンピースやアクセサリー、バッグ、靴など、可愛いアイテムがたくさんありました。USED品ですが、どれも綺麗な状態です。

上の階には、着物や帯もたくさん置いてありました。私は着物を着ませんが、いろいろな柄の着物は見ているだけで華やかな気持ちに。その時いらっしゃった女性の店員さんも、素敵な着物姿でした。

YouTubeで店内の雰囲気がわかる動画を見つけたので、よかったらぜひ見てみてください!(2017年5月公開の動画)

現代のモボ・モガのための交流会も開催|浅草「東京蛍堂」

東京蛍堂さんの店内をめぐる中で気になったのは、地下フロアの存在。
地下には商品は置かれていなくて、設置されている鏡には「DANCE HALL」の文字……ここはいったい……?

と思って調べてみたところ、東京蛍堂さんでは、「日本文化の事を日本人が大切に話せるおとなの社交場を作りたい」という思いから、月に一度交流会を開催しているそう。(詳しくはWebサイトをご確認ください)

着物やスーツ、ドレスに身を包んだ現代のモボ・モガが集い、このダンスホールで交流をしている……。
なんて豊かな時間の過ごし方なんでしょう。

「古物」「大正ロマン」を切り口として世代を超えて「古き良き」を繋いでいく。そして、蛍のような純粋な人が集まる場所をつくる。

そんな思いで活動をされているそうです。

東京蛍堂さん(@tokyo_hotarudo)がシェアした投稿

こちらはニューヨークで行なわれた、「JAZZ AGE LAWN PARTY」参加された時のダンスの映像。踊っているのは、店主と奥様です。2人の雰囲気が素敵すぎる……。

着物なので足さばきなど、ほかの女性よりも小さい動きになっていますが、それがかえって奥ゆかしい印象になって、魅力的に映りました。

「新しいもの」に私たちはたしかに恩恵を受けているけれど、時を重ねたものに宿る価値は、どうやったって創り出せない。
「アンティーク”風”」にはない、本物に触れたいのなら、ぜひこちらに足を運んでみてください。

【店舗情報】浅草「東京蛍堂」

古物商店 東京蛍堂(トウキョウホタルドウ)

営業時間:11:00〜20:00
定休日:月・火曜(祝日は営業)
住所:東京都台東区浅草1-41-8

※記事公開時点の情報です。最新情報は店舗までお問い合わせください。

公式サイト|http://tokyohotarudo.com

浅草出身のライター。「レトロ」を軸に執筆活動を展開。「和樂Web(小学館)」「びゅうたび(JR)」など各種メディアにて、明治〜昭和の喫茶店文化や食文化にまつわるコラム、レトロスポットの取材記事などを執筆。当Webマガジン「てくてくレトロ」主宰。