やっと梅雨があけた7月の終わり。少し歩くだけで汗がじわりと吹き出すような陽気の中、予定を済ませたわたしは遅めのランチができる場所を探していた。
てくてくと神保町を歩いていたら、三省堂の入り口に並んでいる、本がギッチリ詰まったワゴンに目が留まった。どうやら、文庫限定の古本フェアをやっているみたいだ。気になって足を止め、ワゴンの中を眺める。
ずらりと並ぶ背表紙の中から、気になったタイトルのものを抜き取り、目次をざっと読む。何冊分か繰り返したのち、2冊を購入。そして、ある喫茶店に向かった。
神保町の「ギャラリー珈琲店 古瀬戸」で、ひとやすみ
この奥だね。「ギャラリー珈琲店 古瀬戸」さん。
一回来てみたかったのよね、ここ。食事メニューもあるわ、よかった! ここでランチにしましょう。
ん? これ見て、わたしちゃん。
このオブジェがどうかしたの……あ、値札が付いてる。
どうやら、販売もしているみたいだね。中にも作品が飾ってあるのかな。
よし、入ってみましょう。
神保町「ギャラリー珈琲店 古瀬戸」はアートあふれる空間
壁一面に絵が描かれてる! 赤と青のヴィヴィットなコントラストが素敵ね。
店内の壁画は、女優兼画家の城戸真亜子さんが描かれたものなんだって。
あと、僕らが入って来たのと別のところにも入口があるんだけど、そこの外壁に描かれている絵は、大絵晃世さんって方が描いたみたいだよ。
ほかにも、色々な作品が飾られているわね。あっ、値札もついてる。外のオブジェだけじゃなくて、中の作品も購入できるのね。
この掛時計、8万円だって。猫には手の届かない金額だなぁ。
人だって、時計に8万円ってなかなかの金額よ。でも、何十万、何百万とするアート作品もあるわけだし、時計じゃなくて「作品」と考えたら妥当な金額なのかもね。
神保町ランチにおすすめな「ギャラリー珈琲店 古瀬戸」のチキンカレー
わたしちゃん、何を注文したの?
チキンカレーにした! 最近暑くてなかなか食欲もわかないから、スパイスがきいたものを食べたくてね。
わかるよ。夏場ってスパイシーなものが食べたくなるよね。
わーい、おいしそう! この銀色のやつにカレーが入って出てくると、ちょっとテンション上がるわよね。
銀色のやつは「カレーソースポット」って言うんだよ。「ソースボート」「グレービーボート」とも言うね。実は一時期カレー作りに凝っていたときに、自宅用に買ったことがあるんだ。
そうなんだ! 凝ってたって、スパイスから調合するとか?
そうそう。アメ横に行きつけのスパイス屋さんがあってね。色んな配合を試して味の違いを楽しんだりするのは面白いよ。
ほら、カレーが冷めちゃうからそろそろ食べたら?
あ、そうね食べよっと。いただきまーす!
(もぐもぐ……)中辛にしたんだけど、けっこうしっかり辛いわね。喫茶店で出てくるカレーって、お店によってはレトルトっぽいものも少なくないけど、ここのはちゃんとスパイスが効いていて、おいしいわ。
神保町はカレーの激戦区だからね。ここでカレーを出すなら、手抜きはできないんじゃないかな。サフランライスにレーズンっていうのも、昔ながらでいいよね。
ふぃ〜〜、珈琲もおいしいわね。さっき古本市で買った文庫を読もうかな。
どんなの買ったの?
ひとつは、キャサリン・サンソムさんの『東京に暮す』。外交官の夫の赴任に伴って来日したキャサリンさんが、昭和初期の東京の街と人々の暮らしを書いたものなんだって。
それと、嶽本野ばらさんの『カフェー小品集』。これは、実在するいくつかの喫茶店を舞台とした、エッセイ風の物語が集録された短編集よ。
へぇ、面白そう。わたしちゃんにしては珍しいラインナップだね。
古本市をのぞくと、普段読まないような本との出会いがあるから、楽しいのよね。みたら氏も何か買ってなかった?
僕は『老人と海』を買ったよ。タイトルは知ってるけど読んだことなかったから、これを機にと思ってね。
ヘミングウェイだっけ? 私も読んだことないけど、マグロとおじいさんが戦うとか、そんな話よね。
マグロじゃなくて「カジキ」だね。読んだ後貸そうか?
ありがとう! じゃあ、しばらく読書タイムにしましょうか。
【店舗情報】アクセス、禁煙/喫煙|神保町「ギャラリー珈琲店 古瀬戸」
※神保町「ギャラリー珈琲店 古瀬戸」は【全席禁煙】です。
公式サイト