銀座で出会うレトロ喫茶店の魅力。歴史と味わいが詰まった名店3選

銀座の街には、数多くの歴史ある喫茶店が軒を連ねています。今回は、その中から3軒の魅力的な喫茶店を訪れました。レトロな雰囲気が漂う店内で、こだわりのコーヒーやスイーツを味わいながら、銀座の喫茶文化に浸るひとときをご紹介します。

Ken’s珈琲店|レトロな店内で猫の3Dラテアートを堪能

Ken’s珈琲店は、ネルドリップで淹れたコーヒーとケーキを味わえる喫茶店です。正確な時期は不明ですが、おそらく2007年頃の創業。老舗が多い銀座の中では新しめのお店ですが、店内にはレトロな雰囲気が漂います。

今回のお目当ては、猫の3Dアートカプチーノ!カプチーノが来た瞬間、可愛すぎてにやけてしまった(笑)。猫は3匹の時もあるようです。

ちなみに、ガトーフレーズ=イチゴのケーキの総称だそう。ふわふわのスポンジと生クリームに甘酸っぱいイチゴ。最高の組み合わせ!

猫の視線を感じつつ食べ進める

猫のかわいさに目が行きがちですが、コーヒーもしっかりおいしかったです。

Ken’s珈琲店/Coffee & Cake Ken’s Ginza
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カフェーパウリスタ|明治創業、日本の現存最古の喫茶店

カフェーパウリスタは、1911年(明治44年)創業の喫茶店。日本における「現存最古の喫茶店」です。

カフェーパウリスタの創業者は、ブラジル移民政策に携わった水野龍(Mizuno Ryo)氏。移民政策に尽力した水野氏は、ブラジル・サンパウロ州政府から珈琲豆の無償提供を受けます。これを機に、カフェーパウリスタを創業しました。

当時、他店では1杯30銭ほどで出されていたコーヒーを、パウリスタでは1杯5銭で提供。本場のコーヒーを安価に飲めることから、パウリスタは大人気に。パウリスタの登場は、一般市民にもコーヒーが広まる大きなきっかけとなりました。

パウリスタで長年親しまれているという、ザッハトルテ。コーヒーは、数種類の中からパウリスタオールドを選びました。創業から続く伝統の味だそう。

濃厚なチョコレートケーキの中には、フランボワーズジャム。生クリームと一緒に食べると、まろやかさがプラスされてよりおいしい!

当時、銀座には新聞社や雑誌社が多く、パウリスタには沢山の文化人が訪れたそう。芥川龍之介、菊池寛、森鴎外、永井荷風…なんとも豪華な面々!有名人を見たくてパウリスタに通い詰めていた人もいそうですね。

パウリスタは、関東大震災の影響で一時閉店を余儀なくされます。その後、1970(昭和45)年に再オープンしたのが、現在の店舗です。現在の店舗には、ジョンレノンとオノヨーコ夫妻が来日時に、3日連続で来店したという逸話があります。

時代を超えて、著名人に愛されるパウリスタ。感度の高い人々の心をつかむ何かが、パウリスタにはあるのかもしれません。

カフェーパウリスタ/Cafe Paulista
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カフェ・ド・ランブル|戦後日本のコーヒー界に影響を与えた名店

最後に訪れたのは、カフェ・ド・ランブル。パウリスタのすぐ裏手にあります。
ランブルは、1948(昭和23)年に創業した喫茶店。”珈琲だけの店”として、珈琲愛好家から人気のお店です。

ランブルを創業したのは、関口一郎氏(2018年に逝去)。戦後に復員した関口氏は、映画館の機材を扱う仕事をしていたそう。その際、応接室で取引関係者に提供していたコーヒーが好評だったのだとか。

機材事業が立ち行かなくなり、次の事業を模索していた時、関口氏のコーヒーのファンだった人々の勧めで、カフェ・ド・ランブルを創業します。銀座の一番高い店で出されるコーヒーが1杯90円だった当時、ランブルでは100円でコーヒーを提供。強気の値段設定ながら「美味しい!」と評判が広がり、店は大人気に。国内外のコーヒー愛好家が足を運ぶお店として、現在も営業を続けています。

シャンパングラスで飲むコーヒー「ブラン・エ・ノワール “琥珀の女王”」を注文。カウンターの中でコーヒーを作ってくれている様子が見えました。シェイカーから注ぐ様子は、まるでカクテルのよう。

なんてお洒落な飲み物…!と、おしゃれすぎて震えました。でも決して入りにくいお店ではありませんのでご安心を。

ちょっと畏まりつつ一口。コーヒーの香りと甘味が口の中に広がります。おいしい。コーヒーの量自体は少ないですが、濃厚でしっかりと満足感が得られます。

創業者の関口氏は、コーヒー界のレジェンドであり、自家焙煎のパイオニアです。お店では現在ももちろん、毎日自家焙煎をおこなっています。関口氏亡き後も、彼のコーヒーへのこだわりは、お店に生きています。

カフェ・ド・ランブル/Cafe de Lambre
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まとめ
銀座の喫茶店は、それぞれが独自の歴史と魅力を持ち、訪れる人々に特別な時間を提供してくれます。Ken’s珈琲店で猫の3Dアートカプチーノを楽しんだり、カフェーパウリスタで歴史を感じながらザッハトルテを味わったり、カフェ・ド・ランブルで特別なコーヒー体験をしたり。銀座を訪れる機会があれば、ぜひこれらの喫茶店でゆったりとした時間を過ごしてみてください。

浅草出身のライター。「レトロ」を軸に執筆活動を展開。「和樂Web(小学館)」「びゅうたび(JR)」など各種メディアにて、明治〜昭和の喫茶店文化や食文化にまつわるコラム、レトロスポットの取材記事などを執筆。当Webマガジン「てくてくレトロ」主宰。