本と喫茶店て、どうしてこうも合うんだろう?
古本の街・神保町にたくさんの老舗喫茶があるのは、そう思う人がわたし以外にもたくさんいるからなんじゃないかと思う。
昼過ぎに起きた、ある日の休日。もそもそと布団から出て、最低限の身支度をととのえて神保町に向かった。古本屋をのぞいて、岩波文庫の棚から手ごろな文庫を1冊抜き取る。
近くの喫茶店で読もうと思い、ふらふらとおさんぽしている時に見つけたのが、老舗の喫茶店「ミロンガ・ヌオーバ」だった。
神保町「ミロンガ・ヌオーバ 」は古本屋めぐりの休憩にぴったり

わたしちゃん、さっき何の本買ったの?

んとね、石川啄木の歌集を買ってみた。短歌けっこう好きなのよね。
歌人の枡野浩一さんが啄木の短歌を現代語訳した『石川くん』っていう本を出していて。それを読んで興味がわいたの。

そうなんだ。啄木って「働いても働いても楽にならなくて手を見つめちゃったよ」って歌を詠んだ人だよね。
僕は夏目漱石の『こころ』を買ってみたよ。

『こころ』かぁ。昔何回か読んだことがあるけど、細かい内容忘れちゃったな。

じゃあ、読み終わったら本を交換しようよ。僕も啄木の本読んでみたいし。

いいわね! さて、休憩がてらお茶でもしたいわね……あ、向こうに見えるお店はどう?

「ミロンガ・ヌオーバ」って、名前を聞いたことがあるよ。

うん、わたしも名前だけは知ってたけど、入ったことなくて。行ってみようか。
タンゴが流れる神保町の老舗喫茶「ミロンガ・ヌオーバ」で、もくもく読書タイム

全席喫煙かと思ったら、分煙なのね。珍しい。

時代の流れかもね。喫煙エリアとの間に扉はないけど、喫煙エリアが奥まっているから匂いはそんなに感じないね。

席はどこにする?

うーん、本が読みやすそうなのは、真ん中の大きいテーブルの、ライトがあたってる席かな?

そうね、そこに座りましょうか。私はブレンドにするけど、みたら氏は?

僕も同じものを。

はぁ〜、おいしい……。さっき買った本を読もうっと。

僕も読もう。そういえば、『吾輩は猫である』を最初に買おうとしたときに止めたのはなんでなの?

うーん、はっきりとは言いにくいんだけど……。ラストに悲しいことが起きるから、みたら氏にはおすすめできないわ。

そうなの? ……まぁ、深く聞かないでおくよ。世の中には知らない方がいいこともあるからね。

そうね。一つ言えるのは、ビールを飲んだときは足元には気をつけて、ってことかな。

ふぅん、オーケー。ちなみに、このお店は「世界のビール」が飲めるらしいよ。

そういえば、看板にそう書いてあったわね。入口のところにビールのディスプレイもある……見たことのない銘柄がたくさん。

ごはんもののメニューもけっこうあるみたいだよ。仕事帰りに喫茶店で一杯……なんてのもなかなか乙だね。

……集中して黙々と読んじゃった。けっこう時間が経ったわね。

ほんとだ。半分くらいまで進んだかな。

お、読むの早いわね。もう少し読んでいく?

そうだね。区切りのいいところまで読みたいな。

じゃあ、わたしは少し書き物でもしようかな。いつでも切り上げられるから、区切りがついたら声をかけてね。

うん、わかった。
【店舗情報】アクセス・禁煙/喫煙|神保町「ミロンガ・ヌオーバ」
※神保町「ミロンガ・ヌオーバ」は【分煙】です。けっこうしっかり区切られているので、禁煙席からはタバコの匂いはさほど気になりませんでした。【全席禁煙】になりました。