小さい頃、親に連れられて入った喫茶店のメニューにある「ウィンナーコーヒー」の文字に、ぎょっとしたことがある。
ウィンナーって、ソーセージのこと? え、コーヒーの中に入ってるの……?
ほどなくして、「ウィンナーコーヒー=オーストリアの首都・ウィーン風のコーヒー」のことで、コーヒーの上に生クリームが乗ったメニューだ……ということを知った。
今回は、そんなウィンナーコーヒーを日本で最初に出したという、神保町にある純喫茶「ラドリオ」へ。元祖・ウィンナーコーヒーをいただいてきました。
純喫茶ひしめく神保町。ウインナーコーヒーを求めて、ラドリオへ

このあたりはほんとうに純喫茶が多くて、いつもどこに入ろうか迷ってしまうのよね。

わかるよ、名店ばかりだものね。さて、どこに入ろうかな……。お、ここはどうかな?

ラドリオね。奥にはミロンガもあるけど、どうする?

どっちも捨てがたいけど、ミロンガさんはこの間行ったし……今日は生クリームたっぷりのウィンナーコーヒーが飲みたい気分だな。ラドリオにしよう!

1949年創業。薄暗い店内は落ち着いた雰囲気|神保町・ラドリオ

店内は薄暗くて、奥に細長い感じね。赤いカーテンが印象的だわ。

そうだね。ラドリオさんは、1949年創業だったかな? 照明とか内装とか、レトロで落ち着ける雰囲気がいいよね。一人でくつろいでいるお客さんもけっこういる。

ラドリオさんってたしか、日本で初めてウィンナーコーヒーを出したお店なのよね。

そうだね。ウィンナーコーヒーは、「ウィーン風の」っていう意味なんだけど、実際にウィーンには「ウィンナーコーヒー」っていう名前のメニューはないらしいよ。

え、そうなの?

うん。別の名前で、生クリームが乗ったメニューはあるみたいだよ。
まるで芸術品のよう。美しいウィンナーコーヒーを堪能|神保町・ラドリオ

あっ、ウィンナーコーヒーがきたよ!

いつ見ても見事な盛り具合ね!

まるで彫刻のような美しさだよね。うっとりしちゃうなぁ。

崩すのがもったいなくてつい眺めちゃう。でも、早く飲まないと冷めちゃうわよね。

ちなみに、ウィンナーコーヒーは、お客さんが会話に夢中になってコーヒーを飲むのを忘れちゃっても、冷めないように……っていう考えから生まれたものらしいよ。

あ、そうなんだ! じゃあすぐ冷めることはないわね……って言っても、あんまりずっと眺めてるわけにもいかないから、そろそろ飲もうかしら。

飲み方も迷うところだよね。僕は上の生クリームをなるべく崩さないように、下のコーヒーをそっとすするようにして飲むんだ。

わたしは、生クリームが少し溶け出して、コーヒーと混ざってるところをスプーンですくって食べるのが好きなのよね。

ほんのり甘い生クリームとコーヒーがあわさって、美味しい……!

濃いめのコーヒーに甘い生クリーム……素晴らしいマッチングだね。最高じゃない?

ほかのお店でもたまにウィンナーコーヒーを頼むことがあるけど、生クリームが少なめで、ぷかぷか浮いているようなものも少なくないじゃない? それが悪いって訳じゃないけど、ラドリオのウィンナーコーヒーを知っちゃうと、ちょっと物足りなく感じちゃうのよね。

わかるよ。カップにみっちり生クリームが詰まったのを見ると、なんだか幸せな気持ちになるんだよね。ちょっと気持ちが落ちてる時とか、ここに来てウィンナーコーヒー飲みたくなるもん。

幸せ成分の補給、ね。そういう時間も大事よね。そういえば、最近は仕事で忙しかったから、喫茶店でゆっくりするのも久しぶりだわ。

せわしなく毎日を過ごしていると、気付かぬうちに心が疲れてしまうこともあるからね。たまに立ち止まって、自分を労る時間を作るのも大事なんじゃないかな……なんて、説教くさくなっちゃったな(笑)。さて、そろそろ行こうか!
神保町「ラドリオ」店舗情報
※全席禁煙です