古本屋が軒を連ねる神保町には、歴史ある老舗が数多くあります。
古本屋や喫茶店をめぐったあと、お腹を空かせて歩いているときに見つけたお店は、江戸川乱歩が虜になったという天ぷら屋さんでした。
神保町・神田すずらん通りで見つけた文豪ゆかりのお店「天麩羅 はちまき」
今日はけっこう歩いたね。おなかが空いたな。
そうね。そろそろ晩御飯の時間だし、どこかに入りましょうか。
あ、あそこにお店があるよ。
「天麩羅 はちまき」ですって……。あ、みたら氏見て!
「江戸川乱歩が虜になった天ぷら」だって、気になるね。わたしちゃん、たしか乱歩好きだったよね?
そうそう、大学のときに近代文学を専攻していたんだけどね、卒論で乱歩の作品について書いたのよ。
そうなんだ。よし、じゃあせっかくだから行ってみようか。
江戸川乱歩が虜になった!神保町「天麩羅 はちまき」
どれも美味しそうで迷うわ。
僕は天丼にしようかな。初めて来たお店では、なるべく一番シンプルなものを食べることにしているんだ。
なるほどね。じゃあ私も天丼にしようかな。
わわ、おいしそうだね! 海老が2本に鱚(きす)、烏賊(いか)、野菜の天ぷらか。さっそくいただこう。
まず海老からいこうかな……うーーーん、おいしい! サクッとした衣の直後に海老のプリっとした食感が被さってきて、タレの香りがふわっと鼻に抜けてきて……たまらないわね。
うん、すごくおいしいね。それに、後味に油のしつこさをあまり感じないよ。量は多いけど箸が進むね。
江戸川乱歩もこの天丼を食べてたのかな。なんだか不思議な感じ。
さっき調べたんだけど、乱歩をはじめ作家クラブのメンバーが、月イチでこのお店に集まって、「二七会」っていうのをやっていたらしいよ。
そうなんだ! この辺りは、作家さんにゆかりのあるお店が多いわね。
神保町「天麩羅 はちまき」の創業は昭和6年。敷居が高すぎない、入りやすい老舗
ここ、昭和6年の創業当初は屋台からスタートして、昭和20年に神保町にお店を構えたみたいだよ。
歴史ある老舗ね。外から見たときは「ちょっと入りにくい?」なんて思ったけど、入ってみたら全然そんなことなかったわね。お店の人たちも気さくな雰囲気だったし。
天ぷらって昔の人にとってはファストフードみたいな存在だったらしいからね。安くて旨くてすぐ出てくる、みたいな。お店の外に詰襟の学生さんがカウンターで天ぷら食べてる写真が飾ってあったじゃない。昔の学生さんは、学校帰りにマクドナルドに寄るみたいな感覚で天ぷらを食べていたのかもね。
そうかも! 学校帰りにカウンターで天ぷらを食べる……って今の時代だったらものすごい贅沢だけどね(笑)
歴史あるお店に行くと、昔と今の違いを学ぶ機会にもなるから面白いね。その点、神保町は歴史ある良いお店がたくさんあって楽しい町だよね。またおさんぽしに来ようね、わたしちゃん。
そうね、また来ましょう。
神保町「天麩羅 はきまき」店舗情報
※こちらは全席禁煙です。