ザ・ビートルズの『青盤』『赤盤』をご存知だろうか。
1973年にアナログ盤で発売し、1993年にCD版で発売された、ザ・ビートルズのベストアルバム。
幼いころの我が家にはCDがたくさんあって、その中に『青盤』『赤盤』もあった。私がうまれたころには彼らはとっくに解散していたけれど、名前はもちろん知っていたからなんとなく聞いてみたことがある。
デビュー曲の『ラヴ・ミー・ドゥ』をはじめ、『ヘルプ!』『ペニー・レイン』『レット・イット・ビー』など……。どの曲も不思議と耳に馴染んで、すぐに気に入った。iPodに入れて、ひたすらリピートして聞いていた時期もあったな。
……なんてことを、東銀座の喫茶店「樹の花」に立ち寄ったときに思い出した。
ジョン・レノンとオノ・ヨーコ夫妻が訪れた喫茶店「樹の花」。おさんぽの途中でふらりと立ち寄ってみた。
ジョン・レノンとオノ・ヨーコの残り香がそこかしこに。東銀座の喫茶店「樹の花」

わたしちゃん、けっこうおさんぽしたし、どこかでお茶でもしない?

いいわね。あら、あそこ喫茶店じゃない?

「樹の花」だって。いい佇まいの喫茶店だね。

あれ見て、わたしちゃん。ジョン・レノンって書いてあるよ。何だろう……?

どれどれ……?

『一九七九年 夏 ジョンとヨーコは、この狭い小さな階段を昇って樹の花の扉を開いた……』
へぇ、ジョン・レノンとオノ・ヨーコが来店したお店なんだ! しかも2人が来店したのが、オープン4日目ですって。

お店の人、びっくりしただろうね。
「あれ、なんかあの人見たことある気がする」
「ジョン・レノンぽくね?」
「まさかぁ……いやあれ本物だ!!! やば!!!」みたいな感じだったのかな。

店番していてジョンレノンが入ってきたら、めちゃくちゃ驚くわよね。気になるから入ってみようか、ここ!

オーケー。お店は2階みたいだね。行ってみよう!
東銀座「樹の花」で、ビートルズのBGMを聴きながら「イマジンブレンド」をいただく

落ち着いた素敵な雰囲気。BGMはやっぱりビートルズね。昔『青盤』『赤盤』っていうベストアルバムをよく聞いてたのよ。懐かしいなぁ。

へぇ、そうなんだ。僕は洋楽をほとんど聞かないけど、ビートルズはさすがに名前は知ってるよ。たしか来日のときにハッピ着てんだよね。

そうそう。あれは1966年だったかな。私が生まれるずっと前だけど、テレビで映像を見たことがあるわ。あ、見てサインも飾ってある!

ジョンさんのほう、これは自画像かな? なかなか上手だね。
こっちは何だろう? 『大倉ハイヤー氏……?』

オノ・ヨーコさんが、築地のほうで待たせていたハイヤーの運転手さんにあてて書いたメモですって。ここでお茶をしているときに、お店の人にお願いして、運転手さんにメモを渡しに行ってもらったみたいね。

で、お店の人はそのメモをもらってここに飾った、と……。そうか、当時はスマートフォンもなかったから、そういう方法で連絡を取るしかなかったのか。

連絡が取れないって不便だろうな……スマホなしの生活なんて、今じゃ考えられない。
でも、便利だけど「ちょっと疲れたな」って思うこともあるの。スキマ時間はスマホ、っていうのが習慣になっちゃってるから、ぼーっとしようと思って喫茶店に入ったのについついスマホでSNSを見たり、仕事のメールを返してしまったりして。

スキマを簡単に埋められるぶん、余白の時間が減ったな、とは思う。余白って心のゆとりなんだよね、僕にとっては。スマホを手放してわざわざ不便な時代に戻ろうとは思わないけど、たまに電源をOFFにして1日過ごすこともあるよ。

そういう時間もいいかもね。あ、珈琲が来たみたい。

珈琲は何種類かあるみたいだけど、これは何?

「イマジンブレンド」よ。すっきりした感じね。
頼んだあとに気づいたけど、「レノンセット」っていうものあったのね。ジョン・レノンが飲んだ珈琲と持ち帰ったクッキーがセットになったものみたい。そっちにしてもよかったかな。

まぁまぁ。また来たときのお楽しみでいいんじゃないかな。

そうね。今日はもう食事を済ませてきてしまったけど、ここはランチもあるみたいだから、またお昼にでも来てみましょう!
東銀座「樹の花」店舗情報

【みたら氏の一言めも】こちらはレトロな喫茶店には珍しく、全席禁煙です。
のんびりくつろげる、素敵なお店でしたよ。ジョン・レノンやビートルズのファンじゃなくても居心地よく過ごせると思います。