美術館

「箱根ラリック美術館」の緑溢れる館内でジュエリーやガラス作品を鑑賞(展示内容・カフェ紹介)

箱根・仙石原にある「箱根ラリック美術館」。フランスのジュエリー作家/ガラス工芸家ルネ・ラリックの作品を鑑賞できる美術館です。

箱根には度々訪れていますが、箱根ラリック美術館は初訪問。
ガラス製品が好きなので、「いつか行ってみたい」と思っていました。



「箱根ラリック美術館」の緑豊かな館内

「箱根ラリック美術館」は、アール・ヌーヴォーとアール・デコの時代を駆け抜けた、フランスのジュエリー作家/ガラス工芸家ルネ・ラリックの作品が展示されている美術館です。

入館料を支払おうとあたりを見回すも、支払いできそうな場所がなく「あれ?」と思ったら、入館料がかかるのは展示室のみでその他のエリアは自由に入れるとのこと。

入口脇にはレトロな車

館内に入ってまず目を奪われたのは、緑の豊かさ。

広々とした中庭の芝生はきれいに手入れされています。
見るからにもふっとしていて、寝転んだら気持ちよさそう……(※芝生エリアは立ち入り禁止)。

入口の左側には、カフェレストランがあります。
そのまま通路を進んだ奥にはミュージアムショップ、そこからさらに奥へと進むと、展示室があります。

ミュージアムショップ

展示室に至る道の両脇にも緑がわんさか生えています。地面に落ちる木漏れ日が美しいですね。
どこもかしこも緑、緑、緑でなんだか目の疲れが取れるような気がします。

ラリックは自然を愛し、葉や昆虫を作品のモチーフに取り入れることも多かったのだとか。
緑溢れる館内は、そんなラリックの好みが反映されているからなんでしょうか。



アール・ヌーヴォー/アール・デコの時代を駆け抜けたラリックの生涯

緑を眺めながら歩いていると、「箱根ラリック美術館」の展示室へ到着。

「箱根ラリック美術館」を開設したのは、ルネ・ラリックの作品の収集家である実業家・簱功泰氏とのこと。

収蔵作品数は1500点、その中で展示しているのは約230点(入れ替えあり)。
……これ、個人で1500点集めたってことなんですかね? 美術館を開く前はどこに保管していたんでしょうか。

この扉の先が、展示室です。
入口の上には、水の女神をかたどったモチーフがはめ込まれています。

こちらは、ギリシャ神話に登場する美しい森の精「アレトゥーサ」がエーゲ海に浮かぶ島で泉に姿を変える……という神話をもとに、ラリックがデザインしたものだそう。

ちなみにラリックが創設したジュエリーメゾンは現在も存在していて、「アレトゥーズ」というコレクション名で上記モチーフを使ったジュエリーが販売されているようです。

さて、ここから先は撮影できないので、箱根ラリック美術館のInstagramから画像をお借りしつつ、ラリックについて簡単にご紹介。

ラリックがブレイクしたのは、1900年のパリ万博の時。
斬新なラリックのジュエリーはパリ万博を機に大評判になり、20〜40代頃まではジュエリー作家として活躍しました。

ジュエリー作家として大成功をおさめたラリックですが、香水商コティから仕事を依頼されたのをきっかけに、50代以降はガラス工芸家に転身します。

初めのうち、コティからは「香水瓶に貼るラベルのデザインをお願いしたい」と言われていました。
しかし、自身の将来を模索していたラリックは、「香水瓶も作らせてほしい」と積極的に売り込みます。

ラリックはジュエリーの制作をやめ、ガラス工芸家としての道を歩み始めます。
香水瓶や花器、室内用の噴水、部屋に飾る装飾用のガラスパネルなど、より大きな空間へと活動の幅を広げていきました。

ガラス工芸家としてのラリックが注目を集めたのは、1925年のパリ万博(アール・デコ博。正式名称は「現代産業装飾芸術国際博覧会」)。
ラリックは万博会場に15mもの巨大なガラスの噴水を設置。その他、会場内の至るところでラリックのガラス装飾が見られたそうです。

ちなみに、「ラリックはアール・ヌーヴォーとアール・デコ、両方の時代で活躍した」と冒頭でご紹介しましたが、アール・ヌーヴォーとアール・デコの違いはこちらです。(調べました)

アール・ヌーヴォー
19世紀末〜20世紀初頭。花・植物・昆虫などのモチーフを曲線と組み合わせた装飾性のあるデザインが特徴。
浮世絵など日本の影響を受けた作品も多いそう。(ラリックのジュエリーでも七宝が使われているものがありました)

アール・デコ
第一次世界大戦(1914年)の後に生まれたもの。1925年のパリ万博がきっかけで流行りだした。幾何学模様、直線的なデザインが特徴。
アール・ヌーヴォーの時とは逆に、今度は日本がアールデコの影響を受けたそうで、古い建築物の中にはアール・デコの様式を取り入れたものも見られる。

ラリックがジュエリー作家として活躍した時期に流行っていたのがアール・ヌーヴォー、ガラス工芸家として注目を集め始めたのと同時期に流行り出したのがアール・デコ、という感じみたいですね。

上の画像は、美術館の館内で使われているシャンデリア。ラリックがデザインしたものです。
展示の中には、動物をかたどったガラスの灰皿や、車につける飾りなんかもありました。

ジュエリーは身につけるためのものですが、後年制作した工芸品の数々も実際に使えるものが多かった印象です。ラリックさんは飾って眺めるものよりも、人々に使ってもらえるものを作るのが好きだったのかもしれないな、と感じました。

個人的に印象に残ったのは、こちらの展示エリア(以下画像)。

花器がひとつずつ正方形の立方体型のケースに入り、等間隔に並んで展示されているのですが、作品の真上からスポットライトが当たっているので、床に映るケースの影が全部見事に正方形で、それが宝石のカッティングみたいに見えてすごく綺麗なんですよ。

(ってこの説明で伝わるかどうか微妙ですが……インスタの画像にも若干写ってます)。

作品自体の美しさはもちろんのこと、展示の空間もこんなに美しいのかーー!! と感動しました。



箱根ラリック美術館内のカフェレストラン「LYS(リス)」

箱根ラリック美術館には、特別展示としてラリックが室内装飾を手がけたオリエント急行「ル・トラン」があり、そこがカフェになっています。

「ル・トラン」でお茶するのも目的のひとつだったのですが、展示をのんびり眺めていたら受付時間が終了していて入れませんでした……。

残念でしたが気を取り直して、同じく館内にある「LYS(リス)」に行くことに。

写真の左側に見えている、ガラス張りの建物が「LYS(リス)」です。

せっかくなので、中庭の芝生に面した側の席に座りました。景色がいい!!
壁全面が窓なので、店内には日の光がよく入ります。

食事メニューはラストオーダーの時間が終わっていたため、ロールケーキを食べることに。

ううううう美しい……!

中庭の緑がロールケーキの華やかさを引き立てているし、ロールケーキのオレンジも中庭の芝生の青々しさを引き立てている。
窓からの眺め込みでひとつの作品のように見えます。

もちろん見た目だけでなく、味もめちゃくちゃおいしかったです。
柑橘系の果物が数種類使われていたのですが、それぞれに味や食感の違いがあり、楽しめました。

景色を眺めつつ、紅茶を飲みつつ、のんびり。
美術館には年に1〜2回行くか行かないか……という程度ですが、久しぶりの美術館にかなり癒されました。

緑溢れる館内の開放的な雰囲気も、展示室の静謐な空間も、どちらも心地よかったです。

東京・根津の「弥生美術館・竹久夢二美術館」の記事もあります。よろしければどうぞ。

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【施設情報】箱根ラリック美術館

今日のひとこと

美術館のカフェが好きで、展示を見たあとはだいたいカフェに行きます。
こちらの本はカフェを切り口に美術館情報をまとめたもの。第一弾の「素敵な時間を楽しむ」のほうには、箱根ラリック美術館の「ル・トラン」も載っています。

ABOUT ME
中村 英里|てくてくレトロ編集長
フリーランスライター。明治〜昭和頃の喫茶店の歴史にまつわるコラムや、純喫茶の取材記事などを執筆。Twitter:@2erire7