資生堂パーラー銀座本店サロン・ド・カフェの贅沢な空間で、いちごパフェを味わう至福のひとときを

うっとりするような空間だった。

フラミンゴみたいな優しいピンク色の壁に、真っ白なテーブルクロス。
絨毯を踏みしめて席に向かうと、スタッフの方が椅子を引いてくれた。軽く会釈をしながら、椅子に腰をおろす。

メニューを決めて顔を上げると、呼ぶまでもなくすぐにスタッフの方が近づいてきて、注文を聞いてくれる。
注文を終えてふと前を見ると、スタッフの方がお客さんが帰ったあとのテーブルクロスを変えていた。その無駄のない洗練された動きに、思わず見入ってしまう。

美しく完成された空間は心地よい緊張感に満ちていて、普段は猫背な私も、気づけば自然と背筋を伸ばしていた。

1902年に銀座の地に誕生した、資生堂パーラー。
当時、時代の最先端の場所として多くの人に愛されてきたこの店は、今もなお人々を惹きつける唯一無二の存在感を放っていた。

はじまりは薬局。資生堂の歴史|銀座「資生堂パーラー/サロン・ド・カフェ」

資生堂パーラーは、化粧品メーカーとして有名な資生堂が経営している飲食店です。

資生堂はもともと、日本初の民間洋風調剤薬局として、銀座の地に創業。その後、西洋薬学の知見を活かして化粧品の開発にも力を入れていきました。

パーラーが誕生したのは、創業者の福原有信氏のアメリカでの経験がきっかけです。

福原氏は、パリ万博のあとにアメリカに立ち寄った際、ドラッグストア内にソーダ水や軽食を出すカウンター「ソーダファウンテン」が設置されているのを見かけました。

福原氏はその光景を見て、「よし、うちでもやろう!」と思ったそう。アメリカから機材を取り寄せて、1902(明治35)年に資生堂薬局内にソーダファウンテンを設置しました。それがのちの「資生堂パーラー」へと繋がっていきます。

日本でソーダファウンテンを設立したのは、資生堂パーラーがはじめてなんだとか。
ソーダ水やアイスクリームは当時かなり珍しかったので、大きな話題を呼びました。
(ちなみに、資生堂パーラーは「クリームソーダを最初に提供した店」と言われることもありますが、本当に最初だったか、確証はないようです)

今回は、3階の「サロン・ド・カフェ」へ。ほかのフロアには、レストランやバーも入っているようです。
事前予約はできないようで、1階の機械で整理券を発行してもらい、LINEで呼び出しがきたらお店に行く、という流れでした。

店内でしばらく待ち、呼び出しがきたのでいざ3階へ!

店内は洗練された雰囲気|銀座「資生堂パーラー/サロン・ド・カフェ」

資生堂パーラーのサロン・ド・カフェの店内は、うすいピンク色の壁紙が印象的でした。

ピンクといってもオレンジがかった優しい色合いなのでケバさはありません。壁の色とあいまって、テーブルクロスの白さが映えています。壁にある花びらみたいなライトも、さりげなくてかわいい。

店員さんの動きも、なんだかきびきびしていました。
座るときには椅子を引いてもらえましたし、注文をしようとちょっと顔を上げただけで、すぐに気づいて席に来ていただけました。さすが、老舗の名店は違う……。

資生堂パーラーは、ちょっとひと休みするのに入るカフェというよりは、「よし、今日は資生堂パーラーに行くぞ!」と決めて、身なりをきちんとしてから来る場所……というイメージです。

この空間にいるだけで、なんだか背筋が伸びるような気持ちになります。

芸術品のようないちごパフェ|銀座「資生堂パーラー/サロン・ド・カフェ」

資生堂パーラーの2階のレストランでは食事メニューが中心ですが、3階のサロン・ド・カフェは軽食やスイーツがメインです。
すこしお高いな、と思いましたが、季節限定のいちごパフェがどうしても食べてくて、頼んでしまいました……!

ストロベリーパフェ 2,000円

かなり大粒のいちごです。まるで芸術品のような美しさ!
アイスが溶けてしまうのであんまりずっと眺めているわけにはいかないとわかっていても、やっぱりいろんな角度からくるくる眺めてしまう。

ささっと写真を撮り終え、一口。
おいしいぃぃぃぃぃーーーーーー!!! とびっくりしました。

いちごそのものがまず、ものすごく甘くて風味があるので、生クリームやアイスと一緒に食べてもいちごのしっかりとした味わいが感じられます。こだわって選んだいちごを使っているんだろうな。

生クリームとアイスのほかに、ピンク色の層がありますが、これもいちごです。
ジャムみたいな感じなのかと思ったら、砂糖のような強い甘味はそこまでなくて、さらっとしたソースでした。このソース、いちごそのものの甘味がメインになっているので単体で食べてもしつこさはないし、アイスや生クリームと一緒に食べても美味しい。(帰りがけ、レジに瓶詰めのソースが売っていたのですが、パフェに使われていたものかも)

バニラアイスにミルク感たっぷりの生クリーム、いちごのソース……。
フレッシュないちごが主役ではあるけれど、丁寧に手を掛けて作られたサポート役たちがしっかりと脇を固めているからこそ、この美味しさになるんだろうなと感じました。

あったか壷チーズケーキ 2,100円

こちらは、同行者が食べていた「あったか壷チーズケーキ」。
ふわふわのあったかいチーズケーキに、りんごのソテーが乗っています。すこし分けてもらいましたが、添えてあるシナモン風味のアイスと一緒に食べると、また違った味わいが楽しめて最高でした。

資生堂パーラーは、作家の池波正太郎が通っていたことでも有名なお店。
『散歩のとき何か食べたくなって』というエッセイに、資生堂パーラーのことが書いてあります。

池波正太郎が気に入って食べていたのは、ポークカツレツやハンバーグとのこと。
当時のメニューの一部は、2階のレストランで今も食べられるみたいなので、今度はぜひレストランに足を運んでみたいと思います!

資生堂パーラーでは、手土産やおうちカフェのおともにぴったりなお菓子も販売しています。
超絶おすすめなのがチーズケーキ。これはほんっっっっっっとうにおいしい。以下記事で書いているのは季節限定のいちごチーズケーキについてですが、通年で販売しているプレーン味もおいしいのでおすすめです!

【店舗情報】アクセス、禁煙/喫煙、予約方法|銀座「資生堂パーラー/サロン・ド・カフェ」

※「資生堂パーラー/サロン・ド・カフェ」」は【全席禁煙】です。

※予約について:事前の予約はできないので、当日店舗で整理券を発行してLINEの予約アプリを友達登録し、呼び出し通知がきたらお店に行く、という流れです。

浅草出身のライター。「レトロ」を軸に執筆活動を展開。「和樂Web(小学館)」「びゅうたび(JR)」など各種メディアにて、明治〜昭和の喫茶店文化や食文化にまつわるコラム、レトロスポットの取材記事などを執筆。当Webマガジン「てくてくレトロ」主宰。